神鳥の卵 第12話 |
「陛下~こちらなんてどうですか~?」 にこにこ笑顔のロイドが、ファイルを広げてみせた。 目の前には、ベビーチェアに座っている赤ん坊。 小難しい書類がとじられていたそのファイルを赤ん坊が食い入る様に見ていた。 「ぁ~ぅ、ぅ~ぅ~」 書類を指さしぁぅぁぅしか言ってないのだが、ロイドにはそれで通じるのか、身振り手振りを交えて何やら話しているルルーシュに、うんうんと頷きながら相手をしている。その眼差しはおどろくほど優しく、ほんとにロイドかと疑うほどだった。 セシルもこんなロイドは初めて見るらしく、最初は驚いていたが、ロイドの新たな一面を見れてとても楽しげだった。 「では、こちらなんてどうです?殿下が心配されている面でしたら、こちらでカバーできているかと」 そして開かれた資料を再び食い入るように見つめる。 「一体何をしているんだ?」 ひょいっと覗き見たその資料に、C.C.は思わず吹き出した。 「で、こうなったわけだ」 「くっくっくっ、いい格好だぞゼロ」 腹を抱えて笑うC.C.の前には、仮面もマントも身につけたゼロ。 ただし、新デザインだ。 以前のゼロ服から更に進化し、仮面もマントも更に鋭く刺々しくなり、どうみても正義の味方というより悪の総帥という出で立ちだった。 そんなスザクの姿に、ベビーチェアに座ったルルーシュは満足気に頷いており、ロイドは「更に磨きがかかりましたねぇ」と楽しそうだ。 仮面を脱いで一度ため息を吐いた後、ルルーシュを睨む訳にはいかないため、この衣装の共犯者であるロイドをギロリと睨むが、スザクの反応が予想通りだったこともあり、心底楽しそうに笑っているため意味がなかった。 「あのねルルーシュ。たしかに僕はゼロの衣装を変更できないかって言ったよ?でもね、これは違う、違うんだよ!」 そのスザクの叫びに、ルルーシュは「スザク!!」と怒鳴りつけるような表情で「あぅ!!」と叫んだ。その叫びに全員の視線がルルーシュに集まる。するとルルーシュは、赤ん坊らしからぬポーズを取り「そういう時はこういうポーズを取るんだ!!」と言いたげだった。その姿はきりりとして可愛いが、違う、違うんだとスザクはうなだれた。 ゼロの黒衣と仮面は威圧感がある。刺々しいから余計にだ。元々テロリストだし、悪いイメージを抱いているものも多い。だから少し変えれないか、せめてトゲ部分を少しこう、柔らかくしたいんだという思いを込めてルルーシュに相談したスザクだが、間違いなく新しい衣装は悪化していた。 「ルルーシュ、この新しい衣装だけど」 スザクは意を決してハッキリ言おうとルルーシュを見たが、おもわずそこで言葉を止めた。ルルーシュはものすごくキラキラした瞳と笑顔で「どうだ、今度のゼロもカッコイイだろ!」とこちらを見ている。そう、ルルーシュの美的感覚で言うなら、このゼロはものすごくカッコイイヒーローの姿なのだ。 それを否定するなんて・・・・。 「すっごくカッコイイよ!さすがルルーシュだね!!」 スザクは力強く言った。 ルルーシュはぱあっと花が綻ぶような眩しい笑顔を向けて「だろ!お前にもわかるか!」と言っているようで、ああ、この笑顔を壊すなんて僕には無理だと白旗を上げた。とはいえ、これを着て歩くのは・・・避けたい。 「でもねルルーシュ。すっごくカッコイイんだけど、人が多い場所だとこの仮面のこの尖った部分とかマントのここ、ほらこの辺りとかが何かに引っかかったら危ないから、普段は今までの仮面とマントを使うね」 緊急時、つまり戦闘時に引っかかって・・・とかも困るしね? そういうと「そ・・そうか、確かに怪我をする可能性はゼロではないな」と、少し残念そうな顔はしたが納得してくれたらしい。・・・式典とか、何かの時に1回はお披露目しなきゃなと、地味にスザクの悩みの種が一つ増えた。 「う~ん、それにしてもスザクくんもC.C.も咲世子くんも、陛下のお気持ちを完璧に理解してますよねぇ。何かコツとかあるんですか?」 ルルーシュの熱い視線や強い声、そして身振り手振りである程度理解できるロイドとセシルだが、スザクたちほどではない。完全に阿吽の呼吸、ツーカー状態の彼らがすごく羨ましいと思っていた。 「コツですか?いえ、普通にそう言っているように見えません?」 むしろこんなにあからさまなのに、どうしてわからないのだろう?と首を傾げた。 普通わからないよ。とロイドは不貞腐れた声を上げる。 スザクたちぐらい理解できれば、ルルーシュの要望も解りやすいのに。 今回の新衣装も何パターンも用意して、ルルーシュが気に入る部分を抜粋して作るという面倒なことをしたのだ。 「それは簡単な話だ」 ようやく笑いが収まったC.C.がルルーシュを抱き上げた。 「枢木と咲世子はルルーシュがギアスを掛けている。そして私はコードを持っていて、更にルルーシュにギアスを与えた者だ。そのため、無意識下でCの世界を通しルルーシュと繋がっている。その繋がりが会話とは別の情報を私たちにもたらしているんだ」 ということにした。 理由:話を進めやすくするため。 |